創業から2年半。マーケティング会社として始まったデジタルゴリラは、2024年にPLASILとの合併を経て、AI事業へと大きく舵を切った。なぜ、その決断に至ったのか。「デジタルの可能性を最大化する、最強のアナログパワーを持ったゴリラ集団」を目指す同社の代表取締役・菊池 習平に、創業の原点から未来への展望まで語ってもらった。

個人の挑戦から社会価値の創造へ
――2021年に会社を創業されたきっかけや、当時解決したいと感じていた課題について教えてください。
起業のきっかけは、借金を返済するためでした。本当は冒頭からかっこいいこと言いたかったんですが(笑)。
フリーランスとして独立すると同時に法人化しましたね。どうせ法人化した方が有利になる売上は超えるだろうし、会社をやっているほうがかっこいいやろ!と。
創業当初は、会社として解決したい課題というのも特になくて。どちらかというと目を向けていたのは自分自身の課題でした。仕事をどう獲得するか、受注した案件でどう満足していただくか、お取引を継続いただけるか。
マーケターだから成果しかないと思っていました。1億売る力があるお客さまだとしたら、自分が関わることで1.5億の売上を出せるように。会社と言いつつも私1人でしたので、当時はとにかく「どうやって成果を出すか」に向き合っていましたね。
―― そんな中で、大きな転機があったそうですね。
そうですね。当社の顧問を務める衛さん(岡崎 衛氏:株式会社manaby 代表取締役社長)と話す機会があって、「会社を大きくしたいの?したくないの?」と問われたんです。
「したい!」と答えた私に「どこまで?」と聞かれ、「イメージしてないっす!」と(笑)。
衛さんは自身の会社を上場へ導いた実績があり、「もし顧問として力になるとしたら、上場というゴールを達成するためのアドバイスができる」と言ってくださって。その言葉が、大きな気づきになりました。
上場を目指すということは、単なる事業拡大とは全く別なんですよね。事業を伸ばし、売上を上げて、人を増やして会社の規模を大きくするのが事業拡大です。これだけなら、私の営業力だけでもある程度は可能かもしれません。
でも上場となると話が違います。上場には「会社が生き続ける必然性」が必要で、市場の中で求められ続けて、競合がいても負けない根拠がなければならない。
例えば大手広告代理店は、マス広告とデジタル広告の両方でクライアントとのリレーションを持つことや、強力な制作プロダクション体制が整っているなど、他社が参入できない強みがあります。
対照的に、多くの広告代理店のビジネスモデルは似通っています。そういう会社だと「この会社がなくなっても社会が困らない」状態になりがち。自分の手腕だけで代理店を作れたとしても、他の人も同じことをすれば...社会で必要とされることにはならないんです。
これに気づいた時、「自分を裕福にするため」だけでは、必要とされ続ける会社にはなれないと思いました。事業目的は企業によって様々で、それぞれに価値があるものですが、私自身は社会課題と向き合い、長期的に市場から必要とされる企業を作りたいと考えるようになったんです。同じように組織化するにしても、目指す先が全く違う。単純に「会社の売上を増やす」という発想から、「社会にとって必要な存在になる」という発想へと変わっていったのがこの頃でしたね。
組織づくりの挑戦と合併という選択
―― 上場という目標が見えてきた中で、組織づくりにも着手されたのですね。
そうですね。まずは社員を入れることから始めました。といっても、最初は正直なところ「案件が増えて手が回らない!業務を切り離して手伝ってくれる人が欲しい」という状況での採用スタートでした。
最初の正社員採用はうまくいかなかったんですよね。私の力不足で、残念ながら彼が活躍できる環境を与えることができなかった。その反省から、私の業務を一人にすべて任せるのではなく、個人の適性に応じた役割分担を考えるようになりました。
次の動きとして、異なるスキルセットを持つ数名の知人に声をかけ、パートタイム社員で構成されたチームを作っていきました。
彼らと雇用契約を結んだのは、サービスの品質を維持しながら、メンバーのスキル向上も一緒に進められると考えたからです。クライアントはデジゴリ(=菊池)の品質を期待して依頼してくださっていたので、一緒に成長しながら価値提供できる関係が理想だと思ったんです。
ただ、パートタイムのメンバーはフリーランスとして他の活動もしている方が多く、デジゴリに対してフルコミットしてもらうのは難しい面もありました。また、マーケ人材の市場流入が少ない仙台という地域性もあって、組織づくりは思うように進みませんでした。
責任者レベルの人材を育てるには3年くらいかかりそうだな…という肌感覚で、あまり先が見えず、どう進むのかが正解なのかもわからず、悩みましたね。
―― それが、PLASILとの合併という決断につながったんですね。
そうです。合併を選んだ理由は、スピードです。現状のやり方では、責任者レベルの人材を育てるのに時間がかかりすぎると感じていました。
PLASILの代表をしていた千葉 勇志は生成AI領域に精通していて、すでに事業を実際に動かしている時点で責任者レベル。デジゴリとPLASILとの合併という選択は、組織としての成長スピードを一気に加速させると考えました。
M&Aなどいろいろな方法があるなかで、私たちが合併を選んだのは、お互いをよく知る仲だったことも大きいですね。
千葉とは毎週一緒にバスケに行く友人関係でした。会社として目指す方向性が近く、やりたいことにズレがなかった。合併には常に崩壊リスクがつきまとうものですが、お互いの人柄をよく知っているからこそその心配が少ないと思い、彼に声をかけました。
合併の決め手?私はオファーをかけた側なので、千葉がオファーを飲んでくれるのを待っていただけです(笑)。

日本の働き方を変えるAI企業へ
―― 合併を機に、リブランディングも行われましたね。その際に意識されたことはありますか?
はい。合併後、会社の目的を改めて言語化しました。会社の方向性を定める上で、私と千葉が共に納得できる軸が必要でした。
私たちが最も意識したのは「この会社が生き続けることによって、社会がどう豊かになるか」という視点。法人は個人と違って、自然発生するものではなく人が目的を持って生み出すものだからです。この会社は何を成し遂げるための会社なのか?その答えが会社の器になると考え、連日深夜まで話し合いを続けましたね。
その結果、「世界をウホッと!」というミッションを掲げ、新生デジタルゴリラはスタートしました。
そして、2024年末の経営会議にて、私たちはミッションを「日本人がウホっと働ける社会をつくる」に改め、マーケティング会社からAIの会社へとピボットしました。
この背景には、日本が直面している深刻な課題があります。日本のDXは世界から大きく遅れをとっていて、その結果として労働生産性の低下、国際競争力の低下も危惧されている。さらに、少子高齢化によって労働力人口も減り続けている。このままでは、日本の未来は明るくない。
こうした社会問題を解決し、日本を再び活気ある国にしていくことこそが、私たちデジタルゴリラの使命だと考えています。
―― なぜ、会社としてその課題解決に注力しようと考えたのでしょうか?
DXやAIの実装において最も重要なのは、実はデジタルの知識だけではないんです。私たちは「デジタルの可能性を最大化する、最強のアナログパワーを持ったゴリラ集団」を目指しています。
考えてみてください。DXって単なるデジタル化じゃないんですよ。組織の変革なんです。
現場でデジタルを活かすには、戦略を考える力、チームを引っ張るリーダーシップ、本質的な課題を見抜く思考力、人を動かすコミュニケーション力が必要。これ、全部アナログの力なんですよ、面白いでしょ?
私たちは、このようなアナログな能力に優れた人材のことを「ゴリラ」と呼んでいます。デジタルの持つ可能性を最大に引き出すゴリラ集団となることで、生産現場におけるDXを力強く推進していく。これこそがデジゴリの存在意義なんじゃないかと。
デジタルの時代に人間に最も求められる力は、実は最もデジタルじゃない力なのです。
腹をくくって大胆に、人と向き合って繊細に、現場に変革をもたらそう。それが私たちの信念です。
―― 合併を経て、会社の中で最も変化した点や成長を実感した点はどこでしょうか?
一番大きいのは「役割意識」の醸成ですね。
合併以前もそれぞれのメンバーが「このサイト制作のデザイン担当」といったプロジェクト単位での役割は持っていましたが、振り返るとそれは「担当意識」だったのかなと思います。
今は組織の中での役割、つまりコントラストが出るようになってきました。
役員である私と千葉も、組織の中での役割分担を明確にするために動いています。
千葉はテキパキと手を動かすのが得意で、業務改善DX事業や社内の仕組みづくりを猛然と進めています。一方私の得意分野はすべてのプロジェクトの主導権を握り、旗を振ってチームを鼓舞し、とにかく成果にコミットすること。二人の中でもそんな「役割」感が出てきました。
役員だけでなく社員のみんなも、「SNS全般を自分に任せてもらえるように」「デジゴリのクリエイティブは私が」「会社の健康は守ります」など、会社の一員として自ら役割を宣言して、メキメキと力をつけてくれています。これは嬉しいですね。
結果として、誰も余計な感情に揺さぶられず、仕事にまっすぐに向き合う組織に変わってきたと感じています。
成果を生み出す3つの要素
―― 2025年2月現在、注力している事業について簡単に教えてください。
私たちは完全にAIの会社にピボットしました。
単純にAIツールを提供するだけじゃなく、AIを使ってクライアントの成果を最大化する、その価値づけを伸ばしていくことに注力しています。日本企業の労働生産性を上げるために、本気でAIの力を解放したいんです。
―― その考えを実践するために、「ゴリラマインド」という独自の行動指針を掲げていますね。
はい。私たちは5つの行動指針を定めています。「オーナーシップを握れ」「ゴールに喰らいつけ」「現状維持を焼き払え」「ボトルネックを潰せ」「言葉で未来をつくれ」です。
特に大切にしているのは、「オーナーシップを握れ」。これは単に「責任」を握るだけでなく、仕事の舵取り役になるということです。成果を他人任せにせず、自分で状況を動かすゴリラらしい主体性を発揮してほしい。
誰も担当しない仕事が残っている時、片付くのを待っていても何も進みませんよね。自分から「やります」と名乗りを上げて、チーム全体の前進を後押しする。そういった姿勢を重視しています。

―― 実際の組織運営ではどのような特徴がありますか?
「あたま」「ちから」「なかま」の3つの要素を大切にしています。
「あたま」は成果を出すための戦略思考、「ちから」は座学と実践を通じた実行力、「なかま」は成果を出すために組織やチームを動かす力です。

「あたま」は、表面的な課題ではなく本質的な問題を特定する戦略思考です。「なぜ」を繰り返し徹底的に課題の本質を探り当てることで、納得感のある解決策を提供し、より大きな成果へと導いていくのです。
「ちから」に関しては、特にマーケティングの分野においては、知識だけでなく実践を通じた価値創出が重要ということ。座学で得た知識を、クライアントの事業課題に対して専門的に適用し、時にはクライアント以上に深く業界や市場を理解することで、真の成果につなげていきます。
「なかま」は、多様なメンバーを一つのチームとして結びつける力を指しています。フランクで本音を語り合えるピュアな利害関係を築き、「この人に任せたい」と思われる信頼を構築する。これが相互成長の土台になると考えます。
行動指針は半年に一度、組織のフェーズに合わせて見直しをかける予定です。なぜなら、カルチャーこそが組織として成果を最大化する鍵だと考えているからです。
―― 最後に、この記事を読んでくださる方へメッセージをお願いします。
うちの会社はおもしろいと思いますよ。別に派手なことをやってるわけじゃないんですけどね(笑)。
日本のDXが世界から遅れているという問題に、真正面から挑戦している会社です。簡単じゃないけど、だからこそやりがいがある。
実はミッションへの共感はそんなに求めてないんですよ。「理念に共感します!」って言うよりも、成果への執着心が強い人がほしい。自分の働きぶりや姿勢を示せる人には、どんどん責任も役割も与えていきます。会社はミッションを実現するための器なので、成果を出せばポジションもついてくる、そんな環境です。
デジゴリで働くいいところは、組織での自分の役割が社会にどう影響するのかを実感できることかな。マーケターやAIコンサルとして、自分の仕事が世の中をどう変えていくのか、その道筋が見えやすいんじゃないかと自負しています。それって、結構心地いいと思うんですよね。
面白そう!って思った方は、ぜひデジゴリへ。遠慮なく役割を取りに来ていただきたいです。自分から「これやります!」って手を挙げてくださる人を、めちゃくちゃ求めてます。一緒に日本の働き方、変えていきましょう!




